万象流域 - 1/2

万象流転

物事には、万事一つの流れが存在する。
朝がくれば夜に向かうように、流れに沿って物事は進んでゆき、決して逆らうことはない。
我々もその流れの一つであるがゆえ、抗うことなどできはしない。

「難しいこと言ってるけど」

机に頬杖をついて、未登録名前はさも退屈だと言わんばかりにイスから投げ出した足をぶらつかせる。

「私が人間で、あなたが魔物だっていう話のどこに繋がるわけ?」

こいつはいつだって結論を急く。
急いては事を……という諺の一つでも言いたくなるが、セリカにとって重要なのは過程より結果らしい。
故に私は苛立たしい。はっきり言ってやらねば理解しない、こいつの要領の悪さに。

「私とお前では相容れないということだ。人間が魔物に変じることもなければ、その逆もない。他種族同士に愛など生まれようものか」

「でも好き」

がくっと肩が落ちた。

「本当にお前は話を解さないな!私が言いたいのは――」

「あなたも好きでしょ?」

本当に、本当にこいつは話を聞いていない。
私は一言だってそんな事を言っていない。
なのに、ああ何故だ。
話は聞かないくせに、心は簡単に読んでくる。

「認めたくないんだよね」

「……うるさい」

人とかかわることが流れに逆らうことなのか、それともここまでが流れの一部なのか。今の私には、判断が、つけられない。つけたく、ない。

(全ては神……女神のみぞ知る、か)