何よりも深く

ダークは私にやさしくない。

一応、私たちは想いが通じ合った仲なんだけど、それも私が好きって言っただけで、返事はもらってない。頷いただけ。
あれ、それって私が勝手に思い込んでるだけなのかな。
本当は別に私のことなんて好きでもなんでもなくて、浮かれている私のこと哂ってるだけなのかもしれない。
口を開けばバカだのアホだの暴言ばかりで、甘い言葉を貰ったこともない。

だから私は、ダークと離れることを決意して。
いつものように私の家に来たダークにこう言った。

「ねえ、ダーク」

「なんだ」

「もうここには、こないで」

「あ?」

「わたしの、こと。好きじゃないんでしょう?」

決心したはずなのに、私の声は少し震えていた。
ダークのことを見ている余裕もない。
背中を向けて、ぎゅっと握りこぶしをつくる。
ダークは、どう思ってるのかな。
やっと別れを告げられて、嬉しいと思ってるのかな。
そう考えたら、目頭が熱くなった。

「……おい」

「な、に……ンッ」

肩を掴まれたかと思うと、振り向かされて。
ダークと私の唇が重なった。
無理やり舌をねじこまれて、口内を荒らされる。
私の舌をからめとって、吸い付いて、いいように弄んだ。
乱暴な口付け。
抵抗しようとしても、腕はダークに捕らえられている。
ちゅっとリップ音をさせて、唇が離れた。

「バカだな、お前は」

相変わらず冷たい目つき。
でも、口調はどこか、そう「優しく」て。

「好きじゃなかったら、こんなことしねーよ」

「それって、」

「口にしたら……きっと止められなくなる」

なにを、と聞く前に、私の口はダークのそれで塞がれてしまった。