刀剣:日本号

「よう、一杯どうだ」
「……日本号。なんで」
「たまには主様と晩酌でも、と思ってなぁ」
「……明日まで人払いって」
「ああ、近侍殿から聞いたぜ。だがもう日付超えたんでね」
「屁理屈こねないでよ。……今は誰かと話す気分じゃないの。悪いけどほっといて……って上がり込まないでよ!」
「なんか抱えてるだろ」
「な……んで」
「分かるんだよ。もう長い付き合いだ。で、あんたが下手な言葉をかけられたくないのも知ってる」
「じゃあなんで……」
「だからこそだ」
「……え」
「寄りかかれる背中ぐらい、あっても損はねぇだろ?」
「……なにそれ」
「だから、ほれ。こっちこい」
「……」
「……ん。あんた、小せえなぁ」
「日本号に比べたら、大抵のひとは小さいよ」
「そりゃぁな。だが、あんたはその小せえ背中に色々背負ってんだよなぁ。感心、感心っと」
「……酒くさ……」
「辛気臭ぇよりマシだろ」
「……まぁ、ね」