刀剣:笹貫と長曽祢

「お、アンタが今日の手合せ相手?よろしく」
「……ああ、宜しく頼む。笹貫殿」
「殿はいーよ、ガラじゃないし。気楽にやろ」
「そうだな……」
「……なーんかオレ、もしかして嫌われてる?」
「いや、そういうわけでは。……すまん。前の主の影響だな」
「というと?」
「前の主……近藤勇は示現流を甚く警戒していてな。新選組の隊士にも『薩摩の初太刀は必ず外せ』と口酸っぱく言い聞かせていたくらいだ」
「ああ、成る程。確かに示現流は一の太刀が最重要、二の太刀はいらない……とまで言われてるくらいだからねぇ」
「あれ程まで研ぎ澄まされた一撃は、数ある実戦剣術の中でも独特の恐ろしさがあるな」
「えー、なんか嬉し。じゃあアンタは、どっちかっていうと尊敬してくれてるわけだ」
「そうなるな」
「……すっごいストレートに言うね。逆に恥ずかし」
「そうか?思ったことを口にしているだけだが」
「ふは、天然の人たらしじゃん。……嬉しついでに、示現流の型の一つでも披露しよっか。実は一の太刀だけじゃない、連撃もあるってね」
「いいのか?手の内を明かすのは」
「今は味方同士でしょ?」
「……それもそうだな」
「だ・け・ど、実戦剣術の使い手同士だからね。手の内を明かすには――」
「仕合、だな」
「そゆこと。……いざ」
「尋常に」
「「勝負」」

――史実の近藤勇は薩摩人ってだけで厳しい態度取ってたっぽいですが、長曽祢さん自身はそういう偏見なさそうだなと(浦島くんの影響)