刀剣:長曽祢虎徹

「たくさん斬ってきたね」
「まあ、な」
「思うところがある?」
「いや。これは刀の本分だからな」
「そっか。長曽祢はいつも冷静だね」
「そうかな。いつだかあんたが熱を出したとき、一番慌てていたのはおれだぞ」
「うそ、知らなかった」
「あんたは寝ていたからなあ。人の身を持って初めて、主が目の前で倒れたんだ。慌てもするさ」
「でも私が起き上がったとき、全然そんな態度じゃなかった」
「隠していたからな。その前に、清光や国広、和泉守までおれを宥めていたんだぞ」
「そうだったんだ」
「ああ」
「見てみたかったなあ」
「今それを言うのか」
「……ごめん」
「いや、」
「ごめんね。私が弱いばっかりに」
「弱くなど」
「弱いよ。弱いから、こんなことになっちゃった」
「……」
「他の歴史修正主義の……仲間は、もういないのでしょう?あとは私だけ」
「ああ」
「じゃあ、これでお終いだ」
「……おれは、」
「言わないで」
「……すまん」
「何も言わないで、あなたは刀の本分を果たすだけでいい」
「……」
「私を救う手段だよ」
「こんな形で救いたくなかった」
「仕方がないんだよ。もうこれしかない」
「本当に?」
「本当に」
「――、左様ならば」

 さよなら。