半分の月が障子の隙間から差し込んでいるのを、横目でぼんやりと眺めていた。行燈の明かりでは暗い夜を掻き消すことはできず、しかしその昏さはおれたちにとって都合が良かった。
「なんで、なんで、」
吐息の合間に女がひとり、泣きじゃくる。向かい合わせで肌を寄せ、わざと突き上げてやれば女はひんと鳴いてまた涙をこぼした。
「わたし、おとうさんみたいな強い審神者になりたかった、おかあさんみたいな優しい審神者になりたかった、なのに、なんで、」
今朝の演練は散々な結果だった。否、いつものことでもある。
両親ともに審神者から生まれたはずの子は、哀しいかな資質こそあれど才能は秀でているとは言い難かった。
「わたし、わたし、」
「うん」
交わす言葉に意味などなかった。
それでもおれは何かを返さずにはいられない。
弱くて、脆くて、可愛い可愛い我が主を。
「いやだよぅ、審神者、やめたくな……あ」
彼女の声が一層高くなる。突き上げから捏ねるような動きに変えて、彼女の泣き所をしつこく舐った。もはや言葉さえ失って、おれにしがみついて泣き腫らす。その細い腰に腕を回して、いよいよ高みへと押しやっていった。
始まりは果たしてどちらだっただろうか。理由さえも朧げで、噂に聞く霊力供給だかなんだか、とかくどうでもいい内容であったのは覚えている。
そう。どうでもいいのだ。理由など、彼女のこんな姿を見ることができるのが、おれだけであれば。
他に何が要ると言うのだろう。
「――っぁ、」
小さな嗚咽とともに彼女の中が大きくうねり、つられるようにおれも中に欲を放り出す。
しがみついていた腕から力が抜け、彼女はおれにもたれ掛かって眠りについた。その小さな頭を優しく撫でて、おれはひとり、薄く口角を持ち上げていた。