「クルークって、ほんと勉強好きだね」
テスト前でもないのに、居残って勉強するのはクルークくらいだろう。
ちなみに私はいままでアコール先生の手伝いをしており、やっと終わったので教室に荷物を取りに戻ってきたところである。
クルークは、読んでいた本、表紙からして参考書から顔をあげて、露骨にしかめっ面をした。
「なんだい未登録名前、なにか文句でもあるのかい」
「なんでそうなるの。素直な感想だよ」
「どうだか」
クルークは、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向く。
「自分が嫌味言うからって、相手もそうだって決めつけないでよ」
「決め付けてなんかないよ。ボクには、キミが何を言いたいかぐらい分かるんだからね」
分かるっていったって、それは曲解というものじゃないか。
と、言ったところで聞き入れてはくれないだろうから、私は反論をやめてこっそりため息をつくに留めた。
それでもクルークはそっぽを向いたまま。
全く仕方がないやつだ。
「クルーク」
「なんだよ」
「勉強してる姿、カッコイイよ」
ぐるんとクルークがこちらを向いた。真っ赤な顔をたずさえて、金魚みたいに口をパクパクさせている。
思わず笑ってしまいそうになったが、ここで笑ったらまた怒るだろうから、耐えて微笑むだけにする。
「努力家で勉強家のクルーク。私は好きだよ?」
「そそそそそそ、そうかい」
直接的な褒め言葉だと、素直に受け取ってくれるらしい。
全く、仕方がないやつだ。私の思い人は。