「ねえリンク」
「な、なに?」
テーブルに頬杖ついて、じいっと僕のことを見つめていた未登録名前が突然口を開いたものだから、僕は少したじろいだ。
彼女の癖なのだが今だに慣れない。というのは、彼女はなんと他の世界(ニホン、っていったかな)からやって来たらしく、この世界で見るもの全てが目新しいからとよく質問をしてきた。
他の世界からやってきた、ということに疑問を持ったことはない。僕自身、時間を超えた経験があるから、そういうこともあるだろうなと思っていた。
今度はどんなことを聞いてくるのだろう。
「どうしてリンクの耳は長いの?」
「え?」
質問の内容は、僕からすれば当たり前のことばかりだった。
つまり、深く考えたことがないものばかり。
「ええ、っと……確か、ハイラルの民は神様の声をよく聞くために耳が長くなったって」
いつか城下町で聞いた昔話を思い出しながら言った。
すると、彼女は眉間に皺をよせて、なにやらぶつぶつ言い出した。
「すると、耳が長いほうが音がよく聞こえるということかな?確かに耳介にはそういう作用が……いやでも」
未登録名前は、どんな疑問でも、なんでも深く考える。
僕にとっての当たり前が、未登録名前にとっては当たり前じゃない。
彼女といるとそれに気づかされて、驚かされてばかり。
だから、僕は。
「……リンク?なに、笑ってるの?」
「あ、ううん。なんでもない」
未登録名前と一緒にいるのが、大好きなんだ。