ようやく完成する頃には、外はすっかり真っ暗になっていた。
「できた……」
教室のなかは魔導で生み出した星空でいっぱいになっていて、教卓や机、そしてわたしも宙に浮いているように見える。万年赤点のわたしが、よくここまでやれたものだと涙がでそうになった。
赤い星、青い星、大きいのも小さいのも、遠くに見える銀河も。まるでここがひとつの宇宙で、わたしは小さな惑星になってそれらを眺めているような、そんな気分がした。音のない心地よさとまばゆい光が全身を包んで、きっとわたしもこの星の一部になれるのだと思った。
「コラッ!こんなところにいたのか!」
弾かれたように顔を上げた。そこには級友のクルークが、息を切らせながら真っ赤な顔で怒っていた。
「まったく、全然顔を見せないから何事だと思ったじゃないか!今までなにして……」
クルークは周りを見渡して、そしてぎょっと目を見開いた。
「これは……空間描画の魔導?しかも三次元的で細密だ。キミがやったのかい?」
もう観念するしかないな、と思った。
「……そうだよ」
「なんで隠れて……」
「あげたかったの」
「は?何を」
「だから!クルークに星をあげたかったの。だって……誕生日でしょう」
隠しておきたかった。自分から見せたくて、だからこっそり練習してた。上手くなるまで誰にも見せないように、クルークの誕生日までに完璧なものにしたかったのに。
はずかしくてうつむいていると、
「……バカだなぁ」
ため息と、いつものクルークらしい憎まれ口。思わず涙が滲んだ。
「ボクはキミからの言葉が聞ければ十分なのに」
温かい手が頬に触れる。顔をあげると、私以上に泣きそうな、でも嬉しそうな顔をしたクルークがいた。
「未登録名前の言葉。まだ聞いてないよ」
「……おめでとう、クルーク」
そう告げると、クルークは満足げに笑った。
「ありがとう。確かに星、受け取ったよ」