気持ちの名前

気持ちの名前

この気持ちはなんだろう。
リンクくんといるのは、とても楽しいはずなのに。
でも、苦しくもあるんだ。
どうしてかなあ。
あの「きれいな」顔を見ると、胸がぎゅうっとするんだ。

「ねえ、お母さん。リンクくんって、不思議なんだよ」

お夕飯を待っている間、お手伝いをしながらお母さんに話してみた。
お母さんはお料理をしながら返事をする。

「不思議って、どういう感じなの?」

「うーんと……」

いざ言葉にすると、なんて表現したらいいのか、分からなかった。
なので、わたしはこの間リンクくんが言ってたことを思い出しながら言った。

「リンクくんね、未来ってなんだろうって言ってた」

「未来?」

「今がずっと続くことってないのかなって。それって、どういうこと?」

お母さんは料理の手を止めて、かがみこんでわたしに目線をあわせた。

「未登録名前は、リンクくんのことが気になるのね?」

「うん……。でも、どうしたらいいのか、分かんなくて」

リンクくんのことを考えると、楽しいような、嬉しいような、へんな気持ちになる。
この気持ちをなんとかしたいけど、でも、どうしていいか分からない。
分からない。分からないよ。
わたしにはリンクくんのことが分からない。
なんだか悲しくなって、うつむいた。

「きっとね、リンクくんは寂しいんだと思うわ」

「さび、しい?」

顔をあげると、優しい顔のお母さん。

「そう。たった一人で旅をして、色んな人と出会っても、それは一時でしかないの。いずれ忘れられちゃうのが、寂しいんじゃないかな」

どうして旅をしているのかは分からないけどね、とお母さんは付け加える。

「だから、明日が怖いんじゃないかしら。今がずっと続いて欲しいって、そう思ってるのかも」

わたしは、ようやく、違和感の正体が分かった。
リンクくんのあの「きれいな」顔は、「寂しい」って顔なんだ。

「わたし、リンクくんになにをしてあげられるかな?」

リンクくんが寂しいって思ってるなら、それをどうにかしてあげたい。
そう言うと、お母さんはわたしの頭を優しく撫でた。

「未登録名前は、リンクくんのことが好きなのね」

ああ、そうか。
わたし、リンクくんのこと、好きなんだ。
初めて会ったときからずっと。
あの「寂しい」顔が、忘れられなかった。
胸がどきどきするのも、苦しくなるのも、みんな。
リンクくんのこと、好きになってたから。

「わたしがリンクくんのこと好きって言ったら、リンクくん、寂しくなくなるかな」

「ええ。だから、全身で愛してあげなさい」

「……うん!」

わたしは満面の笑みを浮かべた。
やっと自分の気持ちやリンクくんのことが分かったから。
きっと明日、リンクくんに好きって言おう。
どんな返事をされるか、ちょっぴり不安だけど。
でもリンクくんならきっと……。

きっと。