白色絵本

あるところに、とても仲のいい女の子と男の子がいました。
二人はいつも一緒で、遊ぶときも一緒でした。
ずっと、二人は一緒にいると思っていました。
けれどある日、女の子が引っ越すことになってしまいました。
男の子はたくさん泣いていました。女の子は、一生懸命男の子を泣き止ませようとしましたので、泣きませんでした。
でも、本当は女の子も、たくさん泣きたい気持ちでした。
そうして、お別れの朝、男の子は泣きながら、一冊の本を女の子に渡しました。
それは、魔法の絵本でした。
表紙も裏表紙も、中身もなにも書かれていない絵本ですが、その絵本になにをどれだけかいても、ページをめくれば新しいページができるので、なくなることはなかったのです。
男の子と女の子は、その絵本でよく遊んでいました。
男の子は言います。
「一人になっても大丈夫なように、これをあげる」
女の子は絵本を受け取って男の子にお礼をいうと、町を去りました。

引っ越した先の町で、女の子はとても寂しい気持ちでいました。
男の子のことが忘れられず、女の子は毎日、その絵本で遊びました。
たくさんたくさん、かきました。
ある日学校に持っていって遊んでいると、同じクラスの子が話しかけてきました。
その子は絵本を見て、すごいものをもってるんだね、と褒めてくれました。
女の子は、男の子のことを褒められた気がして、とっても嬉しくなりました。
それから、その子と仲良くなり、その子の友達、また友達と、次第に女の子は友達が増えていきました。
そうして、いつしか、魔法の絵本のことは、忘れてしまいました。

女の子は、大人になりました。
大人になったので、ひとりで暮らすことにしました。
そう思ったとき、ふと、男の子のことを思い出しました。
あれからどうしているだろう、とても気になった女の子は、ひとりで暮らす場所を、あの町にすることにしました。
町に戻ってくると、男の子はすっかり大きくなっていました。
けれど女の子のことは覚えていて、また会えたことを喜んでくれました。
そのとき、女の子は気がつきました。
あの絵本はどうしただろう。男の子にもらった、あの魔法の絵本は。
女の子は引っ越した先の家で、たくさんたくさん探しました。
すると、荷物にまぎれて、古びた一冊の絵本がでてきました。
魔法の絵本でした。
女の子は、男の子との思い出をさがそうと、絵本をひらきました。
しかし、いくらページをめくっても、男の子とかいた絵やお話は、でてきませんでした。
絵本は、かいたうえから、古いページが消えていくのでした。
女の子は、泣きました。男の子との思い出が、ぜんぶ、なくなってしまったと思いました。
それを見ていた男の子は言いました。
「裏表紙に、おわり、ってかいてみてごらん」
女の子は言われたとおり、裏表紙に「おわり」とかきました。
すると、絵本がぱっと弾け、今までかいたものが全部、出てきました。
たくさんの紙のたばの中から、女の子は見つけました。
男の子といっしょにかいたものです。
「いつまでも一緒にいられますように」
女の子は、涙をぬぐって笑いました。
男の子も、笑っていました。
ふたりは抱きしめあって、こう言いました。
「いつまでも一緒にいよう」

お話は、これでおしまいです。
あとの白いページはみなさんの自由に、たくさんのことをかいてください。
でも、この絵本は普通の絵本ですから、いつかページがなくなります。

この本を、一番大好きな君へ贈ります。
抱きしめてくれて、ありがとう。