親和性進行度
クルークの機嫌がさらに悪化していた。
「……」
「……クルーク」
「……」
いくら呼びかけても、クルークは本から顔をあげようとしない。
その表情は険しく眉間にはシワがくっきり刻まれたままである。
これまでもクルークの機嫌が悪くなることは何度もあった。でも彼は怒りが持続しないタイプらしく、長くても翌日には立ち直っていた。
だから、今回もきっとそうだと思っていた。
思っていたのに。
どうして怒ってるんだろう。
どうしたら、いつもみたいに話してくれるだろう。
そういえば私、最近はあいつを中心にしたメンバーで戦っていたから、クルークの声あんまり聞いてないや。最後に聞いた声は怒鳴り声だったから、ちゃんとした話をしたのはいつだっけ。
あれ、私、思い出せない。
「――おい!どうしたんだよ!」
クルークの慌てた声ではっとする。
私は、泣いていた。涙が頬を伝うまで気づかなかった。
でも悲しくはなかった。いや、さっきまでは確かに悲しかったが、私は、
「やっとクルークの声、聞けた」
だから、もうそれでいいや。
笑顔になった私を見て、クルークは視線をそらした。
「さっき泣いたカラスがなんとやら、だな……全くキミという奴は」
そうは言いつつ、先ほどよりは雰囲気が柔らかくなったのに、私はしっかり気づいていた。
(さて、どんな話をしてやろうか)