珍しく街でナックルズを見かけたと思ったら、急にこちらに歩み寄ってきて。
「ほらよ」
ぽいっと渡されたなにか。
「なにこれ?」
「……チョコ」
「なんで?」
「……バレンタイン」
え?チョコ?ナックルズが?わたしに?
バレンタインだから?
「どういう風の吹き回し?」
と言うと、ナックルズはがくっと肩を落としてから拳を握り締めて息巻いた。
「お前は!くれてやったんだから礼くらい言えねーのか!」
「いやだって、ナッコがそういうイベントに乗っかるなんて意外中の意外だったもんで」
「悪ィかよ!やっぱやるんじゃなかったぜ……」
「ごめんごめん。ありがとうナックルズ」
「おせえっての」
本当は、めちゃくちゃ嬉しかった。
大好きなナックルズから、しかもバレンタインってことを覚えてて渡してくれたってことが、本当に嬉しくて。
でも素直に喜んじゃったら、きっとそこで会話が終わっちゃうと思ったから。
だからもうちょっと、いじってていいかな!
「ナックルズが一人でお菓子屋行って選んだのかーそうかー」
「そういう想像すんじゃねえ!!!!」