過去も未来も

「ソニックが二人いる……」

シャドウと見間違えたとかじゃなくて、ほんとうに、青いからだに赤い靴の針鼠が、二人いるのだ。
けれど、一人は見慣れたソニックだけど、一人は背も小さく目の色も黒かった。
唖然としていると、見慣れたほうのソニックが言った。

「こいつはクラシックソニックっていう……、ま、平行世界のオレってとこかな」

クラシックソニックが頷いた。言葉は話せないようだけど、意味は分かるといったふうだった。
わたしはクラシックに近づいて、少しかがんで挨拶する。

「初めまして、でいいのかな?よろしくね」

クラシックは大きく頷いて、右手を差し出した。
握手しよう、ということかな。
わたしはその手を取って、握手した。
ソニックより小さい手だけど、暖かさは変わらないんだ。そう思ったら、なんだか嬉しくなって、クラシックに微笑みかけていた。
クラシックは少し頬を赤らめて、視線をそらしてしまった。あ、こういうとこはソニックとは違うんだな。ソニックだったら逆に笑い返すもの。

「ふふ、クラシックかわいいなあ」

手を離してそう言った。
するとなぜかソニックが。

「……なーんか気に入らないな」

いつになく不機嫌そうに呟いた。

「え、なんで?」

「オレ以外のヤツとお前が仲良くしてたら、そりゃ腹立つだろ」

「でもクラシックソニックもソニックなんだよね?」

「オレだけどオレじゃない。言っただろ、平行世界のオレだって」

「聞いたけど……うーんよくわからないよ」

「だからなあ、」

ソニックがわたしに詰め寄ろうとしたとき、クラシックがわたしをかばうように前に出た。

「……やろうってのか?」

クラシックが頷いた。

「OK, Come on!」

その声を皮切りに、二人はスピンダッシュでその場を離れ、遠くのほうで激しい戦いを始めてしまった。
ど、どうしよう。わたしのせい?で二人の仲が険悪に……。
おろおろしながらそれを見ていると、不意に背中をぽんぽんとたたかれた。

「あ、あなたは?」

またも、青いからだに赤い靴の針鼠……だけど、こちらはとっても機械っぽい。
呼ぶとしたら、そう、メタルソニック、といった感じ。

「お願い、二人を止めてほしいの」

しかしメタルソニックは首を振った。そして、戦っている二人を指差した。
指差すほうを見ると、激しいぶつかり合いをしているソニックとクラシック。
その表情は……すごく、生き生きとしている。

「二人は楽しんでやってるからいいんだ、って?」

メタルソニックは頷いた。
うーん、そういうことなら、好きにさせておいたほうがいいのかな。
それにしても、

「あなたは、二人のことよく知ってるんだね」

まるでずっと昔から二人を見てきたような。
それに対し、メタルソニックは何の反応もしなかった。ただ、二人の戦いを見つめていた。

(わたしは「ソニック」が好きだよ)