「あれ?」
いつものように丘に行くと、ダークと一緒に知らない人が座っていた。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
挨拶して、ぎょっとした。
ダークと同じ顔してる。まるで色違いみたいだ。
その人は、緑色の服を着ていて、髪は金髪、目の色は青だった。
もしかして、
「あの、リンクさん、ですか?」
ダークが話していた、時の勇者さんかも。
「そうだよ。君が未登録名前?」
「はい、そうです」
「はは。敬語はいらないよ。名前も呼び捨てでいいし」
リンクさん、いや、リンクは朗らかに笑った。
わ、ダークと同じ顔で笑ってる。なんだか照れるなあ。
「わざわざ俺の様子見に来たんだと。全く暇なヤツ」
ダークはわざとらしくため息をついてみせる。
「そんな言い方しなくても。せっかくきてくれたのに」
「お前どっちの味方だ」
「二人とも仲がいいんだね」
くすくすと笑うリンク。
「ダークにこんな可愛い子がいるなんてね」
「えっそんな可愛いなんて」
「お世辞じゃないよ。未登録名前は可愛い」
そんなふうに連呼されると、嬉しいけど恥ずかしい。
結構、恥ずかしいことを平気で言える人なんだなあ。
なんて返そうか迷ってるうちに、ダークが。
「……馴れ馴れしくこいつの名前呼んでんじゃねーよ」
「っわ」
これ以上ないってくらい不機嫌な声と一緒に、肩にまわされる腕。
わたしはダークの腕の中におさまってしまう。
ちょ、ちょっと、嬉しいけど、人前だと恥ずかしいよ!
「あれ、もしかして嫉妬した?」
リンクは面白そうに笑ってるし!
「違う。コレは俺の所有物だから勝手なことすんな」
「コレって……」
わたしはモノ扱いか。
「わかったわかった。僕はお邪魔みたいだから、もう行くよ」
「そうだそうしろ」
「こらダーク!ご、ごめんね。今度はゆっくり、お茶でもしながら」
「いいよ、お気遣いなく。じゃ、またね」
リンクはそう言って、ひらひら手を振りながら去っていった。
姿が完全に見えなくなるころ、わたしはおずおずとダークに言った。
「……あの、いつまでこうして?」
「お前もあいつ相手にへらへらすんな」
腕の力が強くなる。
リンクが言ってた、ダークは嫉妬してるんだって。
わたしにもわかるよ。そう思うと、なんだか嬉しくなって笑みがこぼれた。
「安心してよ、わたしはダークしか見てないから」
「本当だろうな」
「本当だよ」
「……なら、いい」
そういいつつも、ダークはわたしを離そうとしない。
まったく子供みたいなんだから。
今日はダークの気の済むまでこうしててあげよう。