Another Christmas

*短編ページの「最初のクリスマス」と設定がつながっておりますが、単品でも読めます。合わせて2017年クリスマス企画でした。

「ドクター」

「……」

「ドクターってば」

「…………」

「ヒゲゆで卵」

「ぬわあああんじゃさっきからうっとうしい!!!!」

「だから、用事なんだってば」

「知らん!!!ワシは今忙しいんじゃっ!!!」

 唾飛ばしながら叫ぶと、ドクターはイスに座り直した。ああ机の上に足乗せないでよ、掃除するの誰だと思ってんだ。
 ともかくこんな感じで、ドクターは見るからに暇そうだけどソニックたちに負けたおかげですこぶる機嫌が悪い。ただ、それだけが理由じゃないのも分かっているからあんまり強く言えない。
 今回の計画は、いつにも増して壮大だった。世界のほぼ全てを手中にできたし、念願のエッグマン帝国の建設は目前だった。それと同時に、犠牲も多く出した。建物や器物だけじゃなく、人や動物も。直接手にかけた訳じゃないが、壊れた施設や攻撃の余波などで被害にあった者は計り知れないはずだ。それ程までにドクターは本気だったし、それらも全て覚悟の上だった。だが終わってみれば信じられないほど呆気なく日常が戻り、今では元の基地で世界征服前と同じようにイスに座って踏ん反りかえっている。
 世界はまるで、Dr.エッグマンの数えきれない罪だなんて知りませんよ、とでも言いたげだった。ドクターはそれが悔しくて、恥ずかしくて、ほんのちょっぴり申し訳なくて。だから、昨日ニュースでやっていた、匿名の多額資金援助者が誰であるかなんて言うまでもないのだ。

「ドクター」

 私は呼び続ける。

「最初のクリスマスだよ」

「……だからどうした」

「ソニックたち、パーティやってるらしいよ」

「だからどうした!!」

 ドクターは、やっとこっちを向いた。私はその手を両手で掴む。

「やろうよ。私たちも」

「ハァ?お主何を……っておいい!!」

 私はドクターの手を引っ張って駆け出した。メタボな体を引きずるのはかなり苦労したけど、走り出してしまうと、口ではなんのかんの言っていたが合わせてくれたみたいで、すんなりと目的地に着いた。

「……元作戦本部室?お主、こんなとこに連れてきて何を」

「いーから開けて」

 ドクターは私と扉を交互に見つめていたが、はあとため息をついて扉を開けた。

「「メリークリスマス!!!!」」

 パーン!というクラッカーの音とともに、紙吹雪が飛び交った。

「ボス!せっかくのクリスマスですから、今日くらい騒ぎましょう!」

「ボクらで頑張って用意したんだよー」

「……ふん。今日くらいはゴミどもに付き合ってやる」

「……お前たち」

 オーボット、キューボットはもちろん、基地中のロボットたちやメタル、インフィニットまでがここにいる。メタルは、私の姿を見つけるとなぜかサッと駆け寄って私とドクターの手を払ったが。
 それにも気づかないドクターはしばらく呆けていたが、ぶんぶんと頭をふっていつもの高笑いを決めてみせた。

「ホーッホッホッホ!!!お前たちにしては上出来じゃ!!よかろう、エッグマン軍『全員』で、今日は思いっきり楽しもうではないか!!」

おおーーーっっ!!

 そこからはもう、しっちゃかめっちゃか!ここに書ききれないくらい騒いで騒いで騒ぎまくった。しょぼくれていたドクターもすっかり調子を取り戻し、もう次の計画を練りだす始末。いつもならツッコミをいれる立場の私も、この陽気に浮かれて乗っかってメタルに諭されたり、悪ノリするキューボットがインフィニットにはたかれてたり、とにかく……最高のクリスマスになったことは確かだ。