ACT 1.オーボット・キューボットの場合
「未登録名前さん、どうしたんですか改まって?」
空中庭園に二人を呼び出した私は、なるべく悲しそうな顔をしながら俯いた。
「実は……ここを辞めることにしたんだ」
沈黙。
しばらく待っても何の反応もない。やっぱりこんなの、ウソってすぐバレるんだろうなあと思いながら顔を上げると、
煙が出ていた。
「ええええーーー!?ちょ、落ち着いて二人ともーー!!」
完全にオーバーヒートしている二人をなんとか修理すると、
「ひどいですよ未登録名前さん!ワタクシたちに黙ってそんな……!!」
「水くさいじゃないか!どうして相談してくれなかったのさ!」
二人は目をしょんぼりさせながらしがみつかれた。
まさか、騙されてくれるどころかこんなに必死になってくれるとは思わず、私はジーンとしてしまう。そうか、こんなに思ってもらえてたんだ。どうしよう、嬉しい。嬉しすぎて泣きそうだ。
「なにか、理由があるんでしょう?話してくれませんか」
「あーえっと、」
同時にすごい罪悪感。ドクターからはワシが行くまで引っ張れって指示されてるけど、バラさないと私がもたないぞ。
なんて考えて言い淀んでいると、
「やっぱりボス?ボスについていけなくなったから?」
「え」
「そうですよね!未登録名前さんが辞めるだなんて、それ以外に考えられません!」
「そうだよね!!ボスったら未登録名前のことこき使いすぎるから!」
「だいたいボスはロボット使いも荒い上に横柄ですし、失敗は全部ワタクシたちに投げるんですから!」
「ハロウィンのときなんか大変だったよねー、街中に爆弾仕掛けたけど結局負けたから、総出で街の修理させられたし!」
「なのに自分だけはイスの上でふんぞり返ってるんですよ、本当についていけな」
「ほーーーお……お主ら、そんなこと考えとったんじゃなぁ」
どっきーーーーん
と、彼らに心臓があったなら跳ね上がっていたことだろう。二人は私からそろそろと離れて、ゆっっっっくりと振り返った。
「「ぼ、ボス……!?」」
「オーボットにキューボット!!覚悟せいよ!!」
エッグモービルに搭乗したドクターは、ジャキン!と砲塔を向けたのだった。
「な、なんでボスがここに……っていうか未登録名前さんは!?」
「あんなもんウソに決まっとろーが!!」
「よかった……辞めないんだね……」
「遺言のように言うなキューボット!気を確かに持てー!」
「……こんな面白いところ、自分から辞めたりできないよね!」