April fool - 2/5

ACT 1.オーボット・キューボットの場合

「未登録名前さん、どうしたんですか改まって?」

空中庭園に二人を呼び出した私は、なるべく悲しそうな顔をしながら俯いた。

「実は……ここを辞めることにしたんだ」

 沈黙。
 しばらく待っても何の反応もない。やっぱりこんなの、ウソってすぐバレるんだろうなあと思いながら顔を上げると、

 煙が出ていた。

「ええええーーー!?ちょ、落ち着いて二人ともーー!!」

 完全にオーバーヒートしている二人をなんとか修理すると、

「ひどいですよ未登録名前さん!ワタクシたちに黙ってそんな……!!」

「水くさいじゃないか!どうして相談してくれなかったのさ!」

 二人は目をしょんぼりさせながらしがみつかれた。
 まさか、騙されてくれるどころかこんなに必死になってくれるとは思わず、私はジーンとしてしまう。そうか、こんなに思ってもらえてたんだ。どうしよう、嬉しい。嬉しすぎて泣きそうだ。

「なにか、理由があるんでしょう?話してくれませんか」

「あーえっと、」

 同時にすごい罪悪感。ドクターからはワシが行くまで引っ張れって指示されてるけど、バラさないと私がもたないぞ。
 なんて考えて言い淀んでいると、

「やっぱりボス?ボスについていけなくなったから?」

「え」

「そうですよね!未登録名前さんが辞めるだなんて、それ以外に考えられません!」

「そうだよね!!ボスったら未登録名前のことこき使いすぎるから!」

「だいたいボスはロボット使いも荒い上に横柄ですし、失敗は全部ワタクシたちに投げるんですから!」

「ハロウィンのときなんか大変だったよねー、街中に爆弾仕掛けたけど結局負けたから、総出で街の修理させられたし!」

「なのに自分だけはイスの上でふんぞり返ってるんですよ、本当についていけな」

「ほーーーお……お主ら、そんなこと考えとったんじゃなぁ」

 どっきーーーーん
 と、彼らに心臓があったなら跳ね上がっていたことだろう。二人は私からそろそろと離れて、ゆっっっっくりと振り返った。

「「ぼ、ボス……!?」」

「オーボットにキューボット!!覚悟せいよ!!」

 エッグモービルに搭乗したドクターは、ジャキン!と砲塔を向けたのだった。

「な、なんでボスがここに……っていうか未登録名前さんは!?」
「あんなもんウソに決まっとろーが!!」
「よかった……辞めないんだね……」
「遺言のように言うなキューボット!気を確かに持てー!」

「……こんな面白いところ、自分から辞めたりできないよね!」