April fool - 4/5

ACT3. メタルソニックの場合

 何故だろうか。たとえ嘘でも、メタルにこんな言葉を伝えるのが、とても辛い。
 庭園に呼び出しても、私はなかなか決められたセリフを告げることができないでいた。その間もメタルはじっと私の言葉を待っている。そういえば初めて会った時も、こんな風に気まずい思いをしていた。あの時は今ほどメタルの気持ちが分からなくて、沈黙が苦しくさえ思った。いつからだろう、何も言わない時間が心地よくなっていったのは。
 ちらりとメタルを盗み見る。相変わらず、私を見つめたまま動かない。不審に思っているふうでもなく、かといって急かすでもない。ああ、本当にメタルは優しい。

「あ、あの、ね」

 声が震えた。視線が合わせられない。自然と握りこぶしが出来ていた。

「わ、私。ここを、辞めることに、したんだ」

 メタルは何も言わなかった。そのかわり、静かに私の前に歩み寄る。
 そして。

「……っ、」

 気がつけば、ぎゅうと抱きしめられていた。それはもう痛いくらいに、苦しいくらいに。だけど、私にはそれを止めることはできなかった。かといって抱きしめ返すこともできない。私は戸惑っていた。あのメタルがここまで感情的になるのを初めて見たから。
 不意にメタルが顔を上げる。私は今度こそ視線をそらせなくて、見つめ合った。
 そして、メタルが顔を近づけ、

「ドッキリ大成功じゃ~~~!!!!」

「え、は、ドクター!?このタイミングで!?」

「バカモン、このタイミングじゃなくいつバラすんじゃ」

「いやそうだけど……あ」

 メタルが私から離れた。そしてドクターと私を交互に見て……ギュン!と目が光ったかと思うとドクターに思いっきりタックルした。

「ぬおおおおお!?!?!?」

「メタル!!気持ちはわかるけどストップ!!って私が言えたアレでもないけどとにかく待てーーー!!」

 さらにオーバードライブまでしようとしているメタルを宥めるため、その日一日……つまり、エイプリルフールをすべて費やしたのであった。