ACT3. メタルソニックの場合
何故だろうか。たとえ嘘でも、メタルにこんな言葉を伝えるのが、とても辛い。
庭園に呼び出しても、私はなかなか決められたセリフを告げることができないでいた。その間もメタルはじっと私の言葉を待っている。そういえば初めて会った時も、こんな風に気まずい思いをしていた。あの時は今ほどメタルの気持ちが分からなくて、沈黙が苦しくさえ思った。いつからだろう、何も言わない時間が心地よくなっていったのは。
ちらりとメタルを盗み見る。相変わらず、私を見つめたまま動かない。不審に思っているふうでもなく、かといって急かすでもない。ああ、本当にメタルは優しい。
「あ、あの、ね」
声が震えた。視線が合わせられない。自然と握りこぶしが出来ていた。
「わ、私。ここを、辞めることに、したんだ」
メタルは何も言わなかった。そのかわり、静かに私の前に歩み寄る。
そして。
「……っ、」
気がつけば、ぎゅうと抱きしめられていた。それはもう痛いくらいに、苦しいくらいに。だけど、私にはそれを止めることはできなかった。かといって抱きしめ返すこともできない。私は戸惑っていた。あのメタルがここまで感情的になるのを初めて見たから。
不意にメタルが顔を上げる。私は今度こそ視線をそらせなくて、見つめ合った。
そして、メタルが顔を近づけ、
「ドッキリ大成功じゃ~~~!!!!」
「え、は、ドクター!?このタイミングで!?」
「バカモン、このタイミングじゃなくいつバラすんじゃ」
「いやそうだけど……あ」
メタルが私から離れた。そしてドクターと私を交互に見て……ギュン!と目が光ったかと思うとドクターに思いっきりタックルした。
「ぬおおおおお!?!?!?」
「メタル!!気持ちはわかるけどストップ!!って私が言えたアレでもないけどとにかく待てーーー!!」
さらにオーバードライブまでしようとしているメタルを宥めるため、その日一日……つまり、エイプリルフールをすべて費やしたのであった。