「時に」
声をかけると、それまで窓の外を見ていた彼女が振り返った。
「なあに?」
「君は、永遠というものを信じるかね?」
彼女はきょとんとした表情を見せて、小首を傾げた。
「どうしてそんなこと、聞くの?」
「質問を質問で返すのは、あまり好ましくないよ」
「だって、どう答えていいかわからないの」
眉間にしわを寄せて、口を尖らせる。
これが病室でなく青白い顔でもなければいつも通り愛らしく思えるのに、実に残念なことだ。
視線を逸らして考えこむ彼女の横顔を見ながら、ぼんやりと思った。
「わたしは……」
不意に彼女が顔を上げて、
「永遠なんて、ないんじゃないかな、って思う」
「その理由は?」
「うーん、理由というか、願いかな。永遠があったら、わたしの病気だって永遠に続くものかもしれなくなっちゃう。それはイヤだなって」
「ふむ……」
「このまま病気してたら、りす先輩にも会えないままになる。それもイヤ……絶対、イヤだなって」
わたくしは言葉をつまらせた。
彼女は言葉を紡ぎ続ける。
「だから、永遠なんかないほうがいいな、っていうのが理由かな。あれ、理由じゃなくて……あれれ、わたしなんて言ったっけ?覚えてる?知らない人さん」
「……願い、だな」
「そんなこと言ったっけ?おもいだせないや」
その答えを知りたいのはきっとわたくしのほうだったのだ。
永遠は存在すると自らに言い聞かせたかった。そうすることで、すべてを少しずつなくしてく彼女と永遠を誓い合いたかったのだ。
愛とは永遠である。永遠につづくのは愛よりほかはない。現に、わたくしの顔をわすれてもわたくしの存在は彼女の心にいまだ焼き付いているではないか。
ほら、愛は、永遠なのだ。