巨大な戦艦が炎上し、海に向かって沈んでいく。エメラルドコーストに集まった人々はそれを見て歓喜し、街を救った英雄の名を叫んでいた。
ただ一人を除いて。
「私もあんなの作りたい……!!」
「というわけで、ここで働かせてください!」
「何が『というわけで』じゃ断る!!!!」
「なんでよ!いいじゃんちょっとくらい!!」
「お前を雇うことのどこがちょっとじゃたわけ!!!」
さっきからこの繰り返し。人手不足だろうから簡単に雇ってもらえると思ったんだけどなぁ。やっぱり、基地に乗り込むのにコンピューターにハッキングしてロボット全部フリーズさせたのがマズかったかな?つってもメインCPUまで破損させてはないから修理も楽だと思うんだけど。などと呟いていたら、側近らしい赤いロボットが「単純に機嫌が悪いだけだと思います。ソニックたちに負けたばっかりで」と教えてくれた。そしてひっぱたかれていた。
「どうしてもダメ?」
「ダメじゃ。小娘一人に何が出来る」
「けどボスぅ、ハッキングの腕は確かでぶへぇ!!」
「キューボットまでやかましいんじゃ!!よおし小娘、そこまで言うなら試してやるわ!受かれば採用してやる!」
「本当!?」
「じゃが!一個でも間違えたら即帰ってもらう!よいな!?」
「よっしゃどんとこい!」
それから私はエッグマンの繰り出す質問に次々と答えていった。数学的、工学的な質問をしてくるあたり、腐ってもIQ300らしい。サクサク正解を答えていると、エッグマンはぐぎぎと唸り声をあげた。そんなに私を雇いたくないのかと眉間にしわを寄せていると、復活した赤いロボット君曰く、実力は認めてますけどここまできて後には引けないみたいですねと教えてくれた。子供か。知ってたけど。しばらく唸っていたエッグマンだったが、急に顔を上げるとニンマリ笑った。情緒不安定だな。知ってたけど。
「よし、次で最後の質問じゃ」
「うす」
「ロボット工学の権威、ジェラルド・ロボトニック最後の発明品は?」
ジェラルド・ロボトニック。その名は誰もが知っている。こんにち世に溢れるロボットや機械は、半分以上彼の研究成果によるものである。しかし、宇宙にあるコロニーで大きな事件を引き起こしたとして、彼は犯罪者として処断された。その詳しい理由は世に公表されていない。研究していたものも、事件ののちコロニーごと棄却されているのだ。
「どうした?答えられんか?」
そんな極秘内容、一般人が知る訳がない。だけど、一つでも答えられなかったら雇ってもらえない。私は、ここで諦めたくはない。
だってエッグマンの資金力と開発設備があればなんだってできそうだし!!!!!
「その答えは」
私はぐっと拳を握り締める。
「私が宇宙に行くまで、待っててくれない?」
おそらく。
エッグマンの次の作戦は、そのコロニーに関係があるのだろう。そうでなければ今まで技術的な質問をしてきたのにいきなり極秘プロジェクトの内容が出てくるわけがない。これは私を、真の意味で試しているのだ。私がエッグマンの意図を理解して、なおかつそれを成功させてみせろと言っている。
しばらくの沈黙ののち。
「……貴様、名は?」
「……未登録名前」
「未登録名前!合格にしといてやるわ!ただし、最初は雑用からじゃぞ!」
そんなくらいでメゲてては、最初っからここには来ていない。私はビシッと敬礼してみせ、
「ラジャー了解!」
満面の笑みで返事をした。これからの日々が、楽しみで楽しみで仕方がない。