STH:ソニック

 ふっ、と意識が浮上する。重たいまぶたをなんとか持ち上げて、何度か瞬きをして、それからようやく思い出した。

「しまった……」

 時計の針はもうとっくに12時をすぎていた。せっかく、せっかくソニックと一緒に年越しができるから、年が明けた瞬間最初におめでとうを言いたかったのに。

「Happy New Year」

 くつくつと笑いながら、ソニックが私にも聞き取りやすい英語で言った。

「あけましておめでとう。……でも、起こしてほしかったよ。ソニックに一番におめでとうを言いたかったのに」

 それがうっかり寝てしまうなんて、と落ち込んでいると、ソニックが優しくて大きな手で私の頭をなでてくれる。

「最初でも、最後でも、こういうのはいつ言われてもいいモンだぜ」

「そうかなぁ……」

「ようは気持ちってことさ」

 そう言われれば、確かにそうかもしれない。
 ゆるゆると撫でる心地よさに目を閉じて、これまでのソニックとの思い出を振り返る。たくさん冒険したこと、なんでもない日常のこと、知り合ったたくさんの友達のこと。ソニックがくれた思い出は、これからも大切なもので、私の中心にあり続けるのだと思う。そしてその思い出も、きっと新しい年を迎えるたびに増えていくのだろう。

「ソニック」

「ん?」

「あけましておめでとう。これからもよろしくね」

 そう言うと、ソニックはいつものように親指を上げてウィンクした。

「ああ。また一緒に走ろうな」