STH:ナックルズ

 ナックルズの大きい手が羨ましかった。
 岩を砕いたり崖を登ったり何かを掘り出したり、なんでも出来る大きい手。何度そんなふうになりたかったと思っただろう。私の小さい手じゃナックルズとおんなじことは出来ない。悔しくて、そして寂しかった。

「なんだ、そんなことかよ」

 ナックルズは歯を見せて笑う。何見てるんだ、と聞かれたから正直に答えたのに、笑うなんてちょっとひどい。そう言おうと口を開きかけたのに、不意にその大きな手で私のそれを包んだので息を詰めた。

「俺は好きだけどな。お前のちっちゃい手」

 ――普段、私がそんな言葉を言えば恥ずかしがるくせに、自分で言うときはなんのためらいも見せないのはずるいと思う。